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受信実験

ローテーターと制御システム、そして八木アンテナが完成したので、自作の設備を用いてテレメトリービーコンの受信実験を試みた。(文:JE6LVB)

 

1. 受信実験

実験対象としてHO-68(XiWang-1)を選んだ。この衛星は、製作した430MHz用八木アンテナでビーコンの受信が可能で、かつ有志による受信報告が最近も続いている。実験日時の決定には、JAMSATの衛星通過時刻予報を利用した。無線機はIC-9100を使用し、受信した音声をパソコン上で録音した。
第一回目の実験は夜間に行われた。凍えるような寒さの中、ローテーターがゆっくりと回転し、アンテナが地平線から空へと滑らかな軌跡をなぞるのを見守った。

 

 

ローテーターは問題なく動作し、20分程で実験は終了した。しかし、録音データを確認すると、それらしい信号は録音されていなかった。議論の結果、ドップラーシフトの補正の仕方に問題があったのではないかという結論に至った。
第二回目の実験は朝早くに行われた。今度はドップラーシフトを補正せず、受信周波数を固定するという方法をとった。受信可能時間が短くなることが予想されたが、アンテナが衛星を捉えているかを確かめるのには十分であると判断した。

 

 

実験中、ローテーターは正常に動作し、実験は無事終了した。録音データを確認したところ、20秒足らずではあったが、はっきりと信号が録音されていた。信号を受信した時刻を確認したところ、丁度ドップラーシフトによる周波数ずれが無くなった時刻と一致していた。その後、CWビーコンを解析した結果、確かにHO-68のテレメトリーであることがわかった。

 

[CWテレメトリー]
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2. 今後の活動

衛星通信の第一歩として、衛星自動追尾ローテーターを試作し、CWビーコンの受信に成功した。今後は、受信可能時間や精度の向上に努めていきたい。そのために、アンテナの強化やローテーターの改良、制御システムの洗練などを検討している。ゆくゆくは、受信システムの完全自動化や受信データの管理などの方面にも発展させていけるだろうと考えている。まだまだ発展の余地は大きく残されており、その手前に解決すべき課題も多く課せられている。今後も、自分たちの手で取り組める解決法を探しながら、一つ一つ実現させていきたい。

 

3. おわりに

衛星通信を始めてみようという話が持ち上がった時、それは自分たちにとって縁遠い話に聞こえた。アマチュア無線を始めて1・2年程度である私には、地球の外側、宇宙という世界のスケールがとてつもなく大きく感じた。私たちの衛星通信プロジェクトは、本当に実現ができるのか、半信半疑のような状態から始まった。どこまで自分たちの力でできるのか、手探りのまま情報を集め、慣れない手つきで受信設備を試作した。アンテナとローテーターが完成した時も、自分たちが作ったもので宇宙と通信できるのだということが心から信じられなかった。
受信実験中、衛星の通過するタイミングを狙って待ち構えている時には、普段の交信では味わえないような独特の緊張感があった。アンテナが指す空の遥か向こうには、確かに宇宙が広がっていて、人工衛星がそこにある。そして、遥か遠くから送られてきた電波を小さな受信設備で確かに受け止め、宇宙から届いた音が聴こえてくる。宇宙と地球を結ぶ1つの繋がりがそこにあって、それは確かに自分たちが作り上げたものだった。
衛星放送やGPSが広く利用されている今、個人が衛星と通信をすることに感動を覚える人はあまり多くないだろう。いまや人と宇宙の心的な距離感は、当たり前過ぎて気にかけないほどの距離にまで近づいているのかもしれない。しかし、こうした現状だからこそ、そのような関係を無線技術的な観点という、一歩引いた立場から捉え直すことには十分な意義があるのだと私は考える。自分の頭で考え、自分の手で作り上げることによって、日常に横たわる当たり前の要素は、驚きと発見の宝庫となる。衛星通信は、それに気づく一つのきっかけであった。そして、まだまだ探求しがいのある魅力的なテーマでもある。今後もアマチュア無線活動というアプローチで、自分たちと宇宙との距離を少しずつ縮めていきたい。

 

5. 参考文献・サイト

・『Make: Technology on Your Time Volume 08』(オライリー・ジャパン)
 衛星追尾用のローテーターの他、Arduinoを用いたユニークな作品とその製作法が掲載されている。

 

・衛星追尾用超小型ローテーター・サポートページ : http://njb.virtualave.net/web/make/
 Make08号掲載の衛星追尾用ローテーターの記事を執筆した、野尻抱介氏のサポートページ。Arduinoスケッチや回路図の他、衛星通信に役立つページが紹介されている。

 

・PIC AVR工作室 : http://nekosan0.bake-neko.net/index.html
 Arduinoでシリアル通信を行ったり、サーボモーターを制御したりする仕組みや、簡単なプログラム例が掲載されている。

 

・Orbitron : http://www.stoff.pl/
 今回使用した衛星トラッキングソフトOrbitronが公開されている。

 

・日本各地の衛星通過時刻の予報 : http://www.jamsat.or.jp/pred/
 JAMSATのWebページ。衛星の通過時刻や方位・仰角などの予報データが公開されている。

 

・Live OSCAR Satellite Status Page : http://oscar.dcarr.org/
 海外の有志によるアマチュア衛星の受信報告が公開されているページ。